もりたのおもしろいものたち。

MVを見る男。Awesome City Club「今夜だけ間違いじゃないことにしてあげる」

(見る前)

 「アウトサイダー」がすごく好きだったので、その流れで。

 

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 最初は嫌いだった。すごく良く出来てるMVで、素晴らしい作品だからこそ。サウンドもまたただアップテンポのダンスミュージックではなく、どこかしら大人びた印象を受けるそれはまさしくACCらしさ溢れる1曲だ。そんな彼等のMVだからこそ、どうしてか気に入らなかった。ご存知ではあると思うけどAwesome City Clubのコンセプトは、「架空の街"Awesome City"のサウンドトラック」だ。

 

 このMV、めっちゃチャイナ。確かにこの曲、アジアンテイストにも感じる。しかし、チャイナドレス、中華などのチャイナに寄せすぎているこの映像。それはこれまでのACCが築き上げてきたACCらしさをぶっ壊しているような気がしてならなかった。世界中のどこかにあるかもしれない架空の都市が、一瞬にしてアジアンテイストなチャイナタウンへと変わってしまう。そんな感覚に襲われてしまった。

 

 だから、このMVが嫌いだった。過去形になったのは彼等のアルバム「TORSO」(トルソー)を聴いて、この記事を読んでからになる。

 

 

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 彼等のトルソー以前のアルバムタイトルは、「Awesome City Tracks」で固定されている。しかし、そのこだわり、あえて言い換えるならばその呪いから解放されたアルバムには、ACCらしさがありながらも新しい彼等がいた。新章と銘打った彼等の挑戦が窺える。トルソーとは、マネキンにおける胴体部分を指す。いわば「カラダ」だ。一番大事な部分だ。「架空の街のサウンドトラック」というふわふわしたベールを脱ぎ、彼等は人間にとって一番大事な部分を奏で、歌う。記事にも書いてある通り、彼等のミュージックはより人間を描くようになっている。現に、台湾ロマンスという固有都市を歌った曲がある。彼等はAwesome Cityを抜け出して、こちら側へとやってきた。

 
 とすると、バンドのこれからを決めたMVこそが「今夜だけ間違いじゃないことにしてあげる」ではないだろうか。ある種の限界を見抜き、その見えない都市の幻影から彼等を引っ張り出してきたと言えるのではないか。新章の彼等を聴いていて、より躍動を感じるようになった。そういう目線で見たとき、このMVがとても好きになった。

 
 僕は、架空の街のサウンドトラックが好きなんじゃなくて、Awesome City Clubサウンドがたまらなく好きだからだ。

 

 新章に期待して。