もりたのおもしろいものたち。

もりたの広告の話。「amazarashiのMVで学ぶ現代的マス広告の手法」

 

 技術が芸術に変わる瞬間。

 amazarashiのMVを見たときに、僕はそう感じた。

 

 どうも、もりたです。

 

 みなさんは、amazarashiというアーティストをご存知でしょうか。

 

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 僕の中で邦楽バンドの中では間違いなく上位に入ってくるバンドなんです。端的に言えば、秋田ひろむと豊川真奈美その2人を中心として、ライブなどではサポートメンバーを入れて演奏しているロックバンドです。そんな彼らの音楽は穏やかな優しさを含んでいるサウンドの時もあれば、時には激しく燃え盛る炎のように叫ぶ時もある。難しく言えないので要は幅が広い音楽だということ。

 

 そんなamazarashiの音楽に一貫しているのは、その歌詞のメッセージ。人間賛歌、命や生きていることの素晴らしさ。こう言ってみると、高尚なことを伝えてくるバンドなのかと誤解されるかたも多いかもしれません。ですが、そのテーマを僕たちの日常へと落とし込む歌詞、そして、ボーカル秋田ひろむの切なく叫ぶ声によって、聴く人たちの耳、心へとすーっと染みてきます。

 

 そんなamazarashiのMVがすごいんです。

 

 だいたいamazarashiのMVは、2パターンに分かれます。YKBXさんが手がけるアニメーションと、それら以外の実写でのもの。正直に言ったらamazarashiのMVといえば、YKBXさんのアニメーションのイメージが強いです。秋田ひろむの声と、味のあるアニメーションが相乗効果を発揮し何度見ても飽きないし、モンスターが出てくるんですがその造形もかなり凝っていて、すごく好み。全部紹介したいくらい。

 

「ヒーロー」

 

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(YKBXさんのamazarashiのMVの集大成的作品)

 

 

 しかし、今回はそちらではなく一時期の実写作品の話をしたいんです。

 

 そのMVたちを見たときに、僕は技術が芸術に変わる瞬間を感じたんです。

 

 では、続々と紹介していきます。


「穴を掘っている」

 

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 早速紹介するのは、穴を掘っている。タイトルからはクエスチョンマークしか浮かばないと思いますが、かなり暗い仕上がりになっています。穴を掘っているのMVは、富士山の樹海でただ機械が印刷した紙をまき散らしているという光景をとらえています。それだけならなにも面白みのないと思いますが、その機械から印刷される紙には、twitterに書かれた死にたいというツイートを独自のアルゴリズムで再レイアウトしたものが印字してあります。アート的な絶望の叫びと、印象に残る歌詞が樹海を埋め尽くしていく光景は圧巻。


「季節は次々死んでいく」

 

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 多分一番話題になったであろうMV。アニメ『東京喰種トーキョーグール√A』のオープニングを担当しました。生肉をレーザー加工し、その歌詞の形にしたものを食べ続ける女性を撮影する。その女性が東京喰種に出てくるキャラのリゼにそっくり。最初は上品に食事をしているのですが、終盤になってくるにつれて気が狂った貪りに変わっていく。命を食べて生きているということを明確に衝撃的に表現した作品。

 

「スピードと摩擦」

 

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トイレのなかで女子高生が、気が狂ったように踊るMV。壁一面が歌詞でくりぬかれており、トイレのなかへと投影されていく。コンテンポラリーダンス、と呼ぶのかな確か。あんまり詳しくないのですが、躍動的でなおかつ狂気溢れるダンスが見るに値する一作。

 

 いかがでしたでしょうか。とりあえず数作あげてみましたが、このMV達の共通点は技術を用いられていること。死にたいというツイートを印刷する機械。生肉をレーザー加工して文字の形にする機械。文字をくりぬいて遠くへと投影する装置。その全てが、ある一定の水準をもった技術を用いられて作成されています。すごい、というか、興味を持ってしまうコンテンツであることがわかります。

 

 このMVのクリエイティブディレクターは、本山 敬一さん。SIXという会社の方で、この会社は広告会社である博報堂で熱意のある若者6人が独立して、立ち上げた会社なんです。やはりといいますか、現代の広告に対応したような製作であることを感じました。

 

 いま、広告はコンテンツ化しつつあります。僕が前から話しているような、宝島社の「おじいちゃんにもセックスを」とかゼクシィの「結婚しなくてもいい時代だからこそ、私はあなたと結婚したいのです。」のような、人の心に刺さる言葉つまりはキャッチコピーがメインの広告はあまり少なくなってきてるように感じています。

 

 

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 そして、ンダモシタン小林はあまりコンテンツであるイメージは少ないですが、そういったトリックを含んだものや一目見て、面白いや感心するといった平たく言えばすごいと思われるものこそがいま一番拡散されるものではないでしょうか。

 

 

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 例えば、温泉でシンクロナイズドスイミングをする「シンフロ」

 

 

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 世界最速の新聞配達

 

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 人々はこういった驚くべきコンテンツに興味を抱きます。MVとは、なんでしょうか。アーティストをカッコよく映すもの。アニメーションやドラマ仕立てにすることで、その音楽への共感を強めるもの。しかし、それは方法であり、商業的な観点から言えば、その全てがその作品がより多く民衆に伝わり、販売促進になることを目指しているのではないでしょうか。強いて言うなれば、MVは広告というジャンルに含まれる。そういうものだからこそ、現代的広告と同じ手法をもって製作されるのはもっともかもしれません。現に、広告ディレクターがMVに携わることは少なくない。

 

 

 コンテンツとしてのMVで挙げるとするならば、やはりOKGoを語らずにはいられません。よくよく考えてみれば、彼らはコンテンツ広告としての先駆けでした。

 

 

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 しかし、一方でMVは芸術作品でもあります。芸術って面白いですよね。芸術でありながらも、商業的でもならなければならない。自分の表現と、大衆への反響をいい塩梅にする。かなり悩まされるものだと思います。そんな音楽を下地にさらに表現していくもの、それがMV。そんななか、シックスのさんが製作したもの。それを一言で表現するならば。

 

 技術を芸術に変えた。

 

 僕はそうMVを見て、強く強く感じました。そんな本山敬一さんのamazarashiの作品に他には「エンディングテーマ」や「自虐家のアリー」があります。エンディングテーマでは、映像のなかにリアルタイムで秋田ひろむの顔が映し出されるという技術を用いたり、いろんな人からエンディングノートを貰ってそれらを映していくというコンテンツ。自虐家のアリーに至っては、シックスが製作した歌詞がリリックビデオのように流れていく機械「リリックスピーカー」を用いたものになっています。

 

「エンディングテーマ」

 

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「自虐家のアリー」

 

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 そうした現代的広告の観点から製作されたMVでありながら、なおかつ芸術作品を目指したamazarashiのMV。いかがでしたでしょうか。

 

 確かにど直球の演奏しているシーンやドラマ仕立てのMVも面白くはありますが、CMで言えばただ効能を伝える、ドラマ仕立てでわかりやすくする。そういったものに当てはまるような気がします。こういったコンテンツとして製作されたCM、MVには強い拡散力と、そういったものへと興味のなかったものへの誘引を与えます。「ただ演奏しているMV」と「生肉をレーザー加工して、歌詞にするMV」だったら、何も知らない新規層なら後者を見たくなるに決まってますよね。

 

 やはりテレビなどの影響力がある程度弱くなってしまったいま、広義的な広告にはユーザーからこちらに来てもらう能動的な力が必要ではないでしょうか。そんな時代だからこそ、コンテンツである広告が台頭するのはまったく不思議ではないことかもしれません。

 

 こちらからは以上です。
 ありがとうございました。