もりたのおもしろいものたち。

雑記:世の中は、あふれている。

 

 内勤生活の僕にとって、ささやかな夢がひとつあったりする。

 

 それは、お昼休憩の際にコンビニで買ったパンを人気のない公園で食べることだ。鳩しかいないような公園でベンチに座って、のんびりとサンドイッチとドーナツを食べる。そんなささいな夢。そういうことを日常的にしている人にとっては、そんなことかよと思われるかもしれないけれど、往々にして誰かの日常は誰かにとっての夢であることは多い。僕は、その光景を走馬灯の1つにしたいくらいには憧れていた。

 

 そんな夢が、先日叶った。お昼過ぎから梅田のスカイビルの近くで研修があるので、僕はお昼前には会社を出ることとなった。この時、オールドファッションにしよう。オールドファッション。という思考だけが僕を構築していた。そんな想いを秘めて、僕は梅田スカイビルへと向かう。梅田スカイビルは、大きくて高い。それに、観光客も多い。

 

 夢に、不穏な影が走る。僕の夢は観光客の多い公園のベンチでもそもそ食べるサンドイッチではない。鳩ぽっぽが、鳩ぽっぽと鳩ぽっぽしてるような公園がベストパークなのだ。意地になって、鳩ぽっぽパークを探していると、少し時間はかかったが真っ黒い鳩しかいない都会の縮図みたいな 鳩ぽっぽパークを見つける。ガッツポーズ。ここや!!そんな嬉しさを覚えながら地点を定めた僕は、近くのコンビニに駆け込んだ。

 

 サンドイッチは決めていた。先日、僕がめちゃめちゃ面白いと思っているライターのマキヤさんが無性にカツサンドを食べたがっていた記事があった。

 

makiya-twister.com

 

 

 人が食べたがっているものは、なぜか食指が動く。なめらかに動く。なので、カツサンドがない。カツサンドが、ない。

 

 は?

 

 マキヤさんと同様に、カツサンドがない状況になった。こうなってくると全国のカツサンドを買い占める石油王なるものの存在を確信するほかない。しかし、カツサンドに駄々をこねるわけにもいかず、ハムチーズサンドに妥協。まぁカツっていえばカツ理論でファミチキを購入。オールドファッションとマウントレーニアを買って、すたすたと鳩ぽっぽパークに戻る。まだ時間は余裕。

 

 ベンチ汚っ。

 

 いい感じの荒廃感といえば聞こえはいいが、鳩の糞が岡本太郎リスペクト級に爆発しているベンチだった。なんなのこれ。こんなベンチに座るのは無理。無理無理無理無理。だからと言って、立ったままとかもっと嫌。鳩ぽっぽがゆっくりと僕を囲む。明らかに餌を待つ瞳だった。くっくるーと喉を鳴らしていた。こうして僕は、観光客がわいのわいのする脇で、ファミチキをもしゃもしゃ食べることとなった。


 人生の走馬灯にノミネートするどころか、消したい記憶ナンバーワンだ。感情の天と地を味わった気さえする。そんな僕は、梅田スカイビルの下にある安藤忠雄さんが作った希望の壁という草木に囲まれたアーチの近くのベンチに座っていた。のんびりとしている時間はない。なぜならこのベンチを決めるのにも時間を要し、もはや早く食べないと遅刻するくらいの猶予しか残されていなかった。

 

 しかし、どういうわけか、そういう時ほど物事を考えてしまう。僕は先ほどの鳩ぽっぽパークの近くに駐車されていた車のことを思い出していた。車は縦にずらーっと並び、中にはぐーぐーと眠るおっさんしかいなかった。お昼休憩なのだろうか、サボりなのだろうか。それは定かではないが、その光景を見て楽しそうだと思った。羨ましい。希望の壁には小さな池があって、そこを検査しているチームがいて、みんなで楽しそうに大きな虫取り網で水をすくっていた。そうかと思えば、木々の検査をしながら歩くふたり。海外の観光客を引き連れて歩く人。社長みたいな恰幅のよい外国人に資料片手にプレゼンテーションをしながら歩く人もいた。世の中には、いろんな人がいる。世の中には、いろんな仕事がある。そう思った。糸井重里さんの有名なコピーに、「サラリーマンという仕事はありません」というコピーがある。その通りだなぁ。みんな、仕事をしているといえばその通りだけど、全然違うんだから面白い。

 

 もしかしたら自分が思ってるよりも社会は複雑で、楽しいものなのかもしれない。

 

 

 研修には遅刻した。