もりたのおもしろいものたち。

もりたの広告のお話。「ティファニーからゼクシィへ」

 

 どうも、もりたです。

 みなさんは春頃にコピーライター界隈を激震させた名コピーをご存知でしょうか。ゼクシィのCMなんですが、これは本当に素晴らしい作品だと思います。まずはそちらをご覧下さい。

 

ゼクシィCM「私は、あなたと結婚したいのです」

 

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 すごい。なんだこれは。

 めっちゃ結婚したくなる。結婚することがどれだけ幸せかを伝えるCMは、かれこれ沢山あったと思うんですが近年稀に見る傑作だと思います。音楽、映像、そして、コピーその全てが邪魔することなく上手く組み合わさっています。恐らくなんですが、今年のTCC最高賞はこの作品で決まるんじゃないかなぁ。

 

 街を俯瞰で映すことで大勢の人を、祝福されるようにたくさんの風船とともに浮かび上がっていく2人。この風船は、他の結婚した人たちをイメージしているのかなと勘ぐってみたりすると、この2人は多くいる幸せな夫婦たちのただ1つだけでしかないことを表現しているのかもしれません。そして、朗らかに笑う新郎に対して、一瞬のワンシーンだけ泣いているような顔をする新婦。幸せのあまり泣きそうなのか、はたまた、少しだけ不安を感じているのか。そのどちらかはわかりませんが、その表情がとても良くて、こちらも涙ぐんでしまいます。この女優は何者だ。

 

 新婦役を務めるのは、ゼクシィ10代目ガール佐久間由衣さん。僕は見てないのですが、朝ドラ「ひよっこ」で有名になったみたいですね。笑顔がとても素敵な方だと思います。そして、新婦役を務めますのが清原翔さん。イケメンですね。イケメンにはイケメンとしか表現できない未熟な僕を許してください。この方もとても微笑みが素敵で、キャスティングもうまくはまっていると思います。

 

 そして、音楽がまた素晴らしい。

  The ZombiesのThis Will Be Our Yearという曲なんですが、ゼクシィさんがしっかりしているので訳詞付きのものを用意してくれていますので是非ご覧ください。手の抜かりがない。

 

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 いいですね。ぐっときます。今年の結婚式この曲ばんばん流れるんじゃないかな。しかも、この曲が半世紀前の1968年に発表されたものなんですよね。きっとそんな昔からでも結婚というものがとても大事にされていたこと。それを伝えたくて、この曲を起用したのだとしたら最高の選曲だと思います。そんな映像、音に関してもかなりの完成度を誇るものでありながら、一番高評価を受けたものがキャッチコピーです。

 

 

 結婚しなくてもいい時代だからこそ、私はあなたと結婚したいのです。

 

 

 ゾワゾワゾワと鳥肌が立ちました。ただそれでいて、暖かさに包まれるようなじんわりとした感動がありました。これはすごい。僕の信条に、「いいコピーは説明しなくても伝わる」というのがあるんですが、それはコピーが表舞台に立つときはそのコピーだけだからです。意味の注釈なんかありません。だからこそ、それだけで伝わるコピーが最も素晴らしいんです。結婚しなくてもいいこの時代に、という言葉はいまの時代をよく表していますよね。晩婚化や結婚しなくても良いと思っている人が多くなっていく時代を、みんながみんな実感していると思います。自分達が思っていた社会をうまく言い当てながらもそんな時代だからこそ、私はあなたと結婚したいのですという言葉に繋がるんです。

 

 結婚しなくてもいい。そんな思いがどこかにある人たちがそれでも70億人もいる人のなかでこの人ととならと思えるような運命の人がいるならば結婚したい。こういう風に言ってみれば、みんながあたりまえに思っていることを言っているだけのように聞こえますが、あたりまえのことをメッセージにすることが強いんだと思うんです。さっきも言ったんですが、この時代のみんなが心の底で思っていることを伝えるのが大きな効果があったんだと思います。多くの人から共感を得るには、当たり前のことを伝えることが必要なんです。

 

 結婚しなくてもいい、なんて言葉を結婚雑誌のゼクシィが言うことにも、大きな意味があるんだと思います。

 

 このコピーを製作した会社は恐らく電通だと予測されています。しかし、このコピーを書いた方は誰だかは発表されていません。「多くの人物が担当したものである」と言われており、それこそがこのコピーが生まれた理由かもしれません。みんなが感じていた気持ちをみんなで考えて、みんなへと届くように。そういう想いから出来上がったコピーならば、この傑作にも納得がいくもの。この広告の製作陣には感謝しかありません。本当にありがとうございます。

 

 さて、ここまではゼクシィのお話。

 

 ここからタイトル通り、ティファニーの広告へと話が始まります。ティファニーと、この広告でわかる人にはわかると思います。ティファニーにはこんな名作のコピーがあります。眞木準さんが書かれた、素晴らしいコピーです。

 

 

 ひとりで生きていけるふたりが、 それでも一緒にいるのが夫婦だと思う。

 

 

 この名作。やっぱり眞木準さんは、本当にすごい人なんだと思います。僕がこのコピーをなぜ出したかというと、同じ結婚を表現したコピーなので似たようにも聞こえますが全然違うんです。

 

 「時代、社会、人間」に適している。

 

 有名なコピーライターである山本高史さんが唱えている名コピーの理論なんですが、これの話がしたくて僕は眞木準さんのコピーを出しました。漠然としか理解できなかったこの理論が、この2つを比較することでようやく真の意味で理解できました。

 

 結婚という文化が変化していることは、みなさんも痛感していると思います。亭主関白、妻は3歩後ろを歩けなんて言われていた時代も今じゃ考えられないけど確かにあって、女性は結婚を早くしないと行き遅れなんて言われる時代もあって。そんな時代からゆっくりと、ゆっくりと、女性の社会進出というワードが社会に現れるようになります。眞木準さんのコピーはこの時代に、生まれました。

 

 ひとりで生きていけるふたりが、 それでも一緒にいるのが夫婦だと思う。

 

 2000年、女性の社会進出という言葉がゆっくりと、ゆっくりと、浸透していた時代でした。夫が大黒柱で奥さんが専業主婦で、そんな時代から女性も働く時代へと変遷していく。ひとりで生きていけるふたり、という言葉はそんな背景から生まれてきた言葉なんだと思います。そんな時代でも、それでも一緒にいる。そんな言葉が大きくその時代の社会に響いたことをさして不思議ではありません。そんな時代の「社会と人間」を応援しているコピー。

 

 では、もしも、いまこのコピーが発表されたとして話題になるでしょうか。確かに響きの良さがあるものとして、僕は、きっと、ゼクシィのコピーには勝てなかったと思います。なぜならいま「女性がひとりで生きていける」ということは当たり前すぎることになってしまった社会だから。それが当たり前になってしまったからこそ、現代社会は「結婚しなくてもいい」という晩婚化や未婚化が進んでいるのです。もし、ゼクシィのコピーが、眞木準さんと同じ時代に発表されていたら。結婚しなくてもいいというこの時代に、という言葉が理解されなかったのではないかと思います。

 

 そんな今の「時代、社会、人間」にうまく響いたからこそ、このコピーが素晴らしい理由なんでしょう。

 

 僕はそう心から思いました。

 

 

 以上です。

 ありがとうございました。