もりたのおもしろいものたち。

犯人が明かされないミステリ「どちらかが彼女を殺した」にリベンジしてみた。

どうも、モリタです。

推理小説の謎解きは競馬の予想に似ている」なんて言葉をどこかで聞いたことを思い出しました。

 

つまり、自分の推理をひとつだけに決めつけず、本命、対抗馬、ダークホース、大穴のように振り分けておくことです。そして、犯人が、事件の全貌がわかったとき、自分が想定していたダークホースまでなら「やっぱり俺が思ったとおりだ」なんてあたかもそれだけに絞っていたかのように考えてしまうことです。多くの人がこんな風に考えているからこそ、大穴くらいのどんでん返しじゃないと、皆さん結末に納得いかないんです。

 

勿論、この考え方を否定するつもりはありませんし、何なら僕はだいたいの推理小説を、探偵役が起きてしまった事件を苦悩や困難を乗り越えながら本当の真実にたどりつく「ハートフルサクセスストーリー」として読んでいます。

 

要は推理なんかしていないんですよね。探偵が与えられた材料で犯人までたどりつく過程を楽しんでいるんです。その上で、ラストが自分が想像していなかったものだと尚良し。それくらいの気持ちで推理小説を読んでいました。

 

だからこそ、初めてこの小説を読了したときは、もやもやしたものが残りましたに。

 

今回紹介したいものは、こちらです。

 

 

 

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どちらかが彼女を殺した

 

 

著者は、もはや知らない人はいないんじゃないでしょうかくらいに、ドラマ・映画の原作に引っ張りだこな東野圭吾さんです。近々「天空の蜂」が上映するそうですね。おめでとうございます。

 

この小説なのですが、帯、そして、画像では見えないんですが背表紙にも究極の「推理」小説のような趣旨の言葉が書かれています。では、なにが究極かというと、

 

 

序盤からタイトル通り容疑者の2人のうちどちらかが彼女を殺したことまではわかっているんですが、最後の最後まで犯人がどっちかは教えてくれません。

 

 

事件がうやむやになったとかではなく、登場人物は全員犯人を認識しているのですが、うまいこと表現によって、私達読者がそのまま読んでいるだけでは犯人がわからないようにしています。

 

そんな意地悪な小説のあらすじがこちらです。

 

 

最愛の妹が偽装を施され殺害された。愛知県警豊橋署に勤務する兄・和泉康正は独自の“現場検証”の結果、容疑者を二人に絞り込む。一人は妹の親友。もう一人は、かつての恋人。妹の復讐に燃え真犯人に肉迫する兄、その前に立ちはだかる練馬署の加賀刑事。殺したのは男か?女か?究極の「推理」小説。

 

 

つまりは、兄が探偵役となり、妹の元恋人か友人。そのどちらかが犯人かを突き止めるフーダニット(誰がやったのか?)の推理小説です。

 

 

加賀刑事はお助けキャラ兼ストッパーみたいなやつです。「自分で復讐しちゃだめだよ~法に任せなよ~」的なことを言ってきます。実際はこんなキャラではないです。(一応、この小説は刑事加賀恭一郎シリーズの作品であり、この加賀恭一郎はドラマ「新参者」で阿部寛が演じているのと同一人物です)

 

 

そして、肝心な中身なのですが、探偵役の兄の手によって、自殺に偽装したトリックや部屋に残っていた疑問点など、ほとんどのトリックは暴かれます。しかし、トリックを暴き、真相に近づけば近づくほど、最終的にはどちらにも犯行が可能だったことがわかります

 

さあ、殺したのはどちらでしょう?東野圭吾さんが問いかけてきているのが目に見えてきます。

 

さて、ここでこの小説がなんと呼ばれているか、思い出してみましょう。

 

 

そう、究極の「推理」小説です。

 

 

探読者を置いてけぼりにしているわけではありません。料理を作っていないだけで、材料は小説の中に揃っているんです。この小説はただ料理が出来上がっていく様を眺めている人への、いわば挑戦状です。つまり、

 

 

推理小説を、推理せずに読む人達への反撃なのです。

 

 

僕がこれを初めて読んだのは高校生の時でした。

その時は二択の問題なんて簡単だ。なんて気持ちで手に取り、

読み終わってもモヤモヤしたままでした。しかし、決してネタバレを見ようとはしませんでした。いずれ必ず犯人を突き止めてみせる、と。

この対決だけは逃げてはならない、とそう心に誓っていたのです。

 

 

 

そして、2015年、秋。

長い年月を経て、僕はこの対決に打ち勝つために舞い戻ってきた。

じっくりと一行一行を噛み締めるように読み、そして読み終えた僕は、

ある結論にたどり着きました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まったくわからん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どちらかが彼女を殺した (講談社文庫)

どちらかが彼女を殺した (講談社文庫)

 

 

 

 一度も読み戻ることなく、一気に読み終えた時点では犯人がわかりませんでしたが、全てのシーンに意味があるのではないか、と読み直したりして、ようやく犯人がわかりました。ちゃんと推理する材料は用意されていますので、しっかり推理すればわかると思います。是非とも、自信のある方は挑戦していただきたいです。

 

本当は東野圭吾のミステリへの挑戦など、他の小説も紹介したかったのですが字数も2000字を迎えてしまったので、今回はここまでにさせていただき、また機会があれば、紹介したいと思います。

 

ちなみに、私が彼を殺したという姉妹小説もあり、こちらもまた犯人がわからないまま終わる物語らしいのでよろしければお読みになってください。

 

 

 

 

私が彼を殺した (講談社文庫)

私が彼を殺した (講談社文庫)

 

 

 

 

この作品よりも難易度が高いそうなので、僕はいいです。(半ギレ)